あなたのヘッドホンは嘘をついているわけではありません。ただ、部屋の中のアンプとは違うバージョンのギターやベースの音を届けているだけです。
ヘッドホン、IEM、プラグイン、アンプモデラーで練習しているなら、きっとこの問題に出会ったことがあるはずです。家では音がものすごく良く聞こえるのに、スピーカーで鳴らすと急にキツくなったり、こもったり、埋もれてしまったりする。逆に、ヘッドホンで地味に感じたプリセットが、バンドの中では完璧にハマることもあります。
解決策は魔法のEQカーブではありません。自分のモニター環境が何を聴かせてくれているのかを理解し、実際に使う場所に合わせて音作りをし、信じる前にその音を実際の状況でチェックすることです。
ここでは、無限にノブをいじり続けることなく、ヘッドホンでのギタートーンをトラブルシュートする実践的な方法を紹介します。
なぜヘッドホンだとギタートーンがこんなに違って感じるのか
本物のギターキャビネットは大音量で、指向性があり、物理的です。空気を動かし、部屋と相互作用します。低中域は体で感じ、壁からの反射音を聴き、スピーカーの押し返しに反応します。
ヘッドホンはそのほとんどを取り除きます。音を耳のすぐそばで、近くてダイレクトな形で届けます。アンプシミュやモデラーを使っている場合、たいていはアンプ→キャビネット→マイクというチェーンの音を聴いていて、部屋の中でキャビネットの近くに立っている体験とは違います。
この違いは大きいです。近接マイクのキャビネットは、思ったより細かく、ジリジリしたり、中域が強調されて聴こえることがあります。部屋鳴りのアンプは、音が空間と混ざってから届くので、広がりがあり柔らかく感じます。
ヘッドホン自体もかなり個体差があります。あるヘッドホンは低音を強調し、別のものは高域が鋭く感じられることも。IEMによってはとてもダイレクトで細かい音が聴こえますが、それが便利な反面、ピッキングノイズやフレットバズ、ジリジリ感がスピーカーより大きく感じられることもあります。
だから、ヘッドホンを部屋の4x12キャビネットと全く同じにするのが目標ではありません。どんな環境でも通用する「トランスレートする音」を作ることが目標です。つまり、ヘッドホンからモニター、リハーサル、レコーディング、ライブリグに移ってもちゃんと機能する音です。
ジリジリ・こもり・誤解を招く音のよくある原因
キャビネットシミュレーションの不足や間違ったIR
ダイレクトなギター音が痛いほどジリジリしている場合、まず確認すべきは「キャビネットシミュレーションやインパルスレスポンス(IR)がかかっているか?」です。
ギタースピーカーは、自然に耳障りな高域を大きくカットします。アンプ系の信号をキャビネットのフィルタリングなしでヘッドホンに直で流すと、ガリガリ、パリパリ、不自然な音になります。特に歪みペダルやアンプのアウト、プラグインを使っていてスピーカーステージが抜けているときによく起こります。
IRを使っている場合、それも楽器の一部として扱いましょう。明るい1x12のIR、暗い4x12のIR、近接マイクのコンデンサーIRなど、同じアンプ設定でも全く違うリグのように感じます。まずは馴染みのあるキャビタイプから試してみて、アンプモデルのせいにするのはその後です。
ゲインステージと入力設定
プラグインやモデラーは、入力が強すぎたり弱すぎたり、間違った入力端子に挿していると反応が変わります。ギターやベースをオーディオインターフェースに繋ぐ場合、基本的にはインストゥルメント入力やHi-Z入力を使いましょう。ライン入力は避けてください。
入力レベルが高すぎると、歪みが平坦でジリジリしたり、圧縮感が強くなります。逆に低すぎると、アンプが元気なく弾きにくくなります。EQをいじる前に、入力タイプ・入力ゲイン・ピックアップの高さ・ペダルの出力レベル・インターフェースやモデラーのクリッピング有無など、基本をチェックしましょう。
低音と高音の出しすぎ
ヘッドホンの音作りは、低音も高音も極端になりがちです。特に一人で弾いているときは、低音が気持ちよく感じます(ベースやハイゲインリズムギターならなおさら)。でもその低音は、後でキックやベース、部屋鳴りとぶつかる原因になります。
高音は逆の問題です。少し明るいと輪郭が出ますが、上の方が出すぎるとヘッドホンでは疲れるし、スピーカーでは耳障りになります。ミックスで通用する音は、意外と極端ではありません。低音はタイトに、高音はコントロールし、中域はしっかり残すのがコツです。
プリセットの文脈
工場出荷時のプリセットやダウンロードした音色は、あくまで出発点です。作った人のギター、ピックアップ、弾き方、インターフェース、モニター環境、音楽ジャンルが違います。
一人で弾いてカッコいいプリセットは、バンドでは広すぎたり、中域が抜けすぎたり、リバーブが多すぎたりすることも。逆に、単体では地味なプリセットが、ドラム・ベース・キーボード・ボーカルが入るとちょうど良くなることもあります。
どこでも通用する音作りのワークフロー
ギター、ベース、アンプモデラー、プラグイン、サイレント練習リグ、どれでも使える音作りのチェックリストです。
- 目的地を決める。 この音はヘッドホン練習用?レコーディング用?パワードスピーカーでのリハ用?アンプのリターン用?ライブのIEM用?1つのプリセットで全部完璧にしようとしないこと。
- まずチューニング。 ピッチやイントネーションのズレは音作りの判断を狂わせます。サウンドメイク前にオンラインチューナーでサッと確認しましょう。
- シグナルパスをチェック。 ギターやベースが正しい入力に入っているか、適切な入力ゲインか、クリッピングしていないか、ダイレクトで聴くときはキャビシミュやIRがONか、リアルキャビネットにも繋いでいる場合はダブルでキャビシミュがかかっていないか確認。
- 思っているよりゲインは控えめに。 弾きやすいと感じるまでゲインを上げて、そこから少し下げる。ダブルトラックやバンド音量、ヘッドホンの細かさで、1人で弾いているときより歪みが多く感じることが多いです。
- 細かいEQの前に低音と高音を整える。 まずはブーミーな低音や耳障りな高音を抑えましょう。その後で中域を調整。ボディ感が欲しければ下の中域、アタックや抜け感が欲しければ上の中域を足します。
- 同じ音量で比較する。 音が大きい方が良く感じるのは当たり前。プリセットを比べるときは、できるだけ音量を揃えてから判断しましょう。
- 文脈でテストする。 ドラムループ、バッキングトラック、リハ録音、ラフミックスなどに合わせて弾いてみる。音が埋もれるなら、単純に音量を上げるより中域を足した方が効果的です。
- バージョンを分けて保存する。 ヘッドホン練習用、レコーディング用、ライブ・リハ用など、必要に応じて別々に保存。名前も分かりやすくして、間違ったプリセットを直し続けないようにしましょう。
5分でできるトーン翻訳ドリル
ヘッドホンで短いリフやグルーヴを録音します。その音をヘッドホンで聴き、次にスピーカーや実際に使う再生環境で聴きます。1回に1つだけ変更(ローカット、ハイカット、ゲイン、キャビ選び、中域)を加えます。これを1回繰り返し、3回で止めてベストバージョンを保存しましょう。
これで無限の微調整を防ぎ、自分のヘッドホンがどこを強調するか学べます。
ヘッドホンやIEMを信頼できるリファレンスにする方法
完璧よりも一貫性が大事です。毎回違うイヤホン、スタジオヘッドホン、ノートPCスピーカー、リハモニターを使っていると、音作りの基準が定まりません。
自分がよく知っているモニター環境を1つ決めましょう。そこで完成された音源がどう聴こえるか、自分のクリーントーン、歪みトーン、ベーストーンがどう鳴るかを覚えましょう。そのリファレンスが耳に入れば、音作りの判断がしやすくなります。
良いIEMは、再現性が高く、外部の影響を受けにくいリスニング環境を作ってくれます。サイレント練習、トラックに合わせたリハ、ライブ用パッチ作りなど、一定のインイヤーリファレンスがあると音作りがブレにくくなります。SoundbrennerのWaveインイヤーモニターやWave Proインイヤーモニターは、集中した練習や本番準備のために1つのモニター環境を持ちたい人におすすめです。
ただし、良いモニター環境があっても「目的地チェック」は必須です。IEM用に作った音は、PAやレコーディングチェーンでも必ずチェックしましょう。リアルアンプ用の音は、実際のアンプで、現実的な音量、できれば本物の部屋で試しましょう。
安全のための注意点:スピーカーアウトをヘッドホン端子のように扱わないでください。ヘッドホンをアンプに繋ぐ場合は、必ず専用のヘッドホンアウト、ラインアウト、ロードボックス、アッテネーター、メーカー公認のサイレント録音経路を使いましょう。不明な場合は、何かを繋ぐ前に必ずマニュアルを確認してください。
実践的な考え方はシンプルです。目的地に合わせて音を作り、慣れたリファレンスで聴き、1つのプリセットで全部やろうとせずバージョンを分けて保存する。ヘッドホンの音を「部屋のアンプ」にする必要はありません。自分が気持ちよく弾けて、音が外に出ても通用する判断ができる音を作ることが大切です。